愛媛FCに全く興味のない大多数のみなさん(入場者数22クラブ中20位!どうにかしないとホントマズいよ(泣))、一平くんのNHK出演で愛媛FCが「ちょっとだけ」気になってきた”極”少数のみなさん、そして、世界中に散らばっている”極々”少数の愛媛FCファンのみなさん、こんにちは。2015年11月29日は愛媛FCにとって記念すべき、J1昇格プレーオフの初戦「セレッソ大阪」戦でした。
2015年愛媛FCのJ1への冒険、ここで潰える
日本のプロサッカーリーグ2部の「J2リーグ」は、先週11月23日で終了。
愛媛FCのリーグ戦成績は5位で、見事「J1昇格プレーオフ」へ進出しました。
「J1昇格プレーオフ」はリーグ戦を終えた6日後の今日から。
リーグ戦終了の余韻に浸るまもなく、大事な大事な1戦を迎えたのでした。
「J1昇格プレーオフ」は、J2リーグのリーグ戦3位から6位のクラブがトーナメントで戦い、その勝者がJ1へ昇格するという制度です。
組み合わせは、
(出典:jleague.jp)
このように決まりました。
リーグ戦5位の愛媛FCはリーグ戦4位のセレッソ大阪と対戦です。
ただ、トーナメントには特別なルールがあって、
・ゲームは、リーグ戦順位が上のクラブのホームで行う
・引き分けの場合は、リーグ戦順位が上のクラブの勝利
というものです。
つまり、リーグ戦で順位が下の愛媛FCは勝たなければファイナルに進めないという、不利な状況でゲームがスタートします。
とは言え、それは最初から分かっていたことで、劣勢は覚悟の上。
地方のスモールクラブ(too small club?)にとっては、この舞台に立って、
自分たちにもJ1へ上がる可能性があることを目に見える形で示すことに大きな意味があるのです。
相手は、セレッソ大阪、昨年度人件費予算16億8千万。
愛媛FC、昨年度人件費予算2億5千700万。
越えなければいけない壁は高く、厚いぞ。
行けるのか、愛媛FC!!
(出典:jleague.jp)
引き分け
でも…、
愛媛FC負けた(涙)。
前半スタートから気合いの入ったプレーで、愛媛FCは良い入り方をしました。
気負いすぎず、堅くもならず、中盤でしっかり戦って、競り合いのボールを上手くマイボールにしながら、良い形で攻撃を繰り出していきました。
セレッソにはシュートこそ許していたものの、ほとんどがセットプレー(フリーキックやコーナーキック)に絡んだもので、完全に崩されての失点のピンチはあまりなかったように思います。
前半はある程度「行ける」という自信を得て、終えることができました。
ところが、
後半が始まると状況は一転。
前半、緊張の中、守備でかなり動かされていたからでしょう、
セレッソのパスワークになかなか着いていくことができなくなり、ほとんどの時間、
セレッソがボールを保持してゲームが進みました。
両サイドを押し込んでからの鋭いクロスボール(ゴール前を横切るボール)、
強さと高さのある田代有三選手のポストプレーによるゴール前での攻撃、
玉田圭司選手、関口訓充選手、楠神順平選手などのスピードに乗ったドリブルでの突破など、
厚みのある攻撃によって、愛媛FCはどんどん守備に追われていきます。
何度も「やられた…」というシーンを作られましたが、ゴールキーパーの児玉剛選手を中心にした愛媛ディフェンス陣は踏ん張り、ギリギリの所でゴールを許しませんでした。
なんとか反撃を試みたい愛媛FCは、白井康介選手、安田晃大選手、村上祐介選手と、次々と攻撃的な交代で流れを変えようとしますが、自陣深くに追いやられてからの単発のカウンターでは威力がなく、ほとんど流れは変わらず。
終了間際、愛媛FCは最後の力を振り絞って、前線に進入してコーナーキックを連続して獲得。
ゴールキーパーの児玉剛選手までゴール前に上がって1点を目指しましたが、得点には到らず、「0−0」でゲームは終了。
2015年愛媛FCのJ1への冒険は、ここで潰えることになりました。
死力を尽くした選手達はピッチに倒れ込み、涙を流して本気で悔しがっていました。
大健闘のJ2リーグ戦 初のJ1昇格プレーオフへ
今年の愛媛FCはJ2リーグで最も躍進したクラブの1つになりました。
次の順位表を見てみて下さい。
昨シーズンとの比較です。
昨シーズンから比べると勝ち点が17のプラスで、順位は下から4番目の19位から5位にまで上り詰めました。
これは本当に素晴らしい成績です。
サッカーの世界では「選手に支払えるサラリーの多さで順位が決まる」と言われていて、
「人件費予算の大きなクラブ=強いクラブ」であることが、現実に証明されています。
愛媛FCの人件費予算は先述の通り、2億5千700万。
この金額がどれくらいの大きさかというと、J2に所属する22クラブの中で19番目なのです。
下から4番目で、ハッキリ言って残留できれば御の字の規模。
悪い順位のように見える昨年の順位こそ、愛媛FCにとっては妥当な順位と言えるのです。
今年もほぼ同じレベルで予算を組んでいるはずで、今年も残留争いに巻き込まれても何の不思議もなかったのですが、
今季から就任した木山隆之隆監督は、昨年作り上げた攻撃の形を熟成させながら、ウイークポイントだった守備に手を入れを短期間で再構築することに成功。
そこに、ローン(レンタル移籍)で加入してくれた、瀬沼優司選手、藤田息吹選手、岡崎建哉選手、秋山大地選手、内田健太選手、安田晃大選手、白井康介選手、といったメンバーが尽く活躍してくれたことで、思ってもいないような大きな成果を上げることなりました。
木山隆之隆監督のチームを作り上げる手腕、対戦相手の分析、そして、選手を生かしその気にさせるマネージメント能力。
予算の小さな愛媛FCをここまで引き上げてくれるとは、本当に優秀な頼れる監督です。
J1昇格プレーオフでの敗退は残念ですが、今年の愛媛FCの躍進は高く評価されるべき出来事です。
J1への挑戦は失敗 それでもJ1昇格プレーオフに進んだ意味はとてつもなく大きい
「健闘したのはよく分かった。でも、J1に上がれなかったら余り意味がないのでは?」
と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
今回分かったのは、J1への可能性を感じながら戦うことで、
監督、コーチ、選手はもちろん、クラブも、そして応援するファン・サポーターも
「本気で勝ちたい」と意識が変わること。
今までの愛媛FCは、J2に昇格してから10年で、1桁順位がたったの1度だけ。
負けるのが当たり前で、勝てばラッキーというクラブになってしまっていました。
そして、いつまでたっても予算が増えず、クラブは弱く、年を追うごとにお客さんの数は減り、浮上できる要素が全く無いままで、
クラブもクラブを取り巻く人々も、目標を見失っていたように思います。
それが、ただ1つ可能性という「希望」を与えらるだけで、大きく変わりました。
現場の選手達は”勝負へのこだわり”を強く見せるようになり、ゲームを経験するごとに大きく成長していきましたし、
ファン・サポーターも「勝つ喜び」を知ることで、スタジアムへ足を運ぶことに、大きな意味を見出せるようになりました。
そしてクラブ。
監督・コーチ、選手の頑張りに最も応えられていなかったのが、クラブです。
立派な計画を作成してはみるものの、それに相応しい器には全く成長できておらず、当事者ですら現実味のないものに映っていたように思います。
それが「J1に挑む戦い」を経験して、「上を目指すために、足りないもの」を実感として理解し始めたのでしょう、
外部からではありますが、シーズン後半にかけてJ1を目指すための働きかけを積極的に行うようになったクラブの姿勢を見られ、「上を目指すための、勝つための仕事をやろう」という機運が高まっていることを感じるのです。
(と言っても他クラブには全然及びません)
「プレーオフ圏内に入ること」だけで、こんなにもたくさんの人々に”熱”を与え、
クラブとクラブを取り巻く人々の意識を大きく変えるのですから、
今後につながる大きな経験であったことには間違いありません。
チームはまた1からスタート 強いチームを作るのは簡単じゃない
この成績を受けて、「さぁ、来年は自動昇格の1位、2位を目指そう」と言いたくなるところですが、現実にはそうも行きません。
愛媛FCの主力選手にはローン(レンタル移籍)で加入してくれた選手が含まれています。
基本的には、1年で元のクラブに戻る契約なので、このオフには愛媛FCを離れるのが基本路線です。
さらに、好成績を残したクラブで活躍した選手は、より大きなクラブから高いサラリーを提示されて移籍していきます。
愛媛FCの選手のサラリーは低いですから、他のクラブからすると引き抜きやすいんです。
と言うことで、主力選手の何人かにはオファーが寄せられ、愛媛FCを去ることになるでしょう。
となると、新しい選手が加入することで、もう一度組織を作り直さなければいけないので、
また「1からやり直し」になるのです。
チームにとって”積み上げ”ができないというのは、本当に深刻な問題で、チームの要になるような選手は是が非でも引き留めなければいけないのですが、それができないクラブは、いつも「1からやり直し」を強いられる厳しい状況に陥ります。
本気で強くなろうとするなら、やはり、規模を大きくするしかありません。
多くのファンにスタジアムへ足を運んでもらい、スポンサーを少しでも獲得して、簡単には選手を引き抜かれないような体制を整えるしかないのです。
愛媛FCのみなさん、”本気”、出してみないか。
まとめ
2015年、愛媛FCのJ1への冒険は道半ばで終わりました。
それでも、「J1昇格プレーオフを戦った」という大きな大きな財産を得ることのできた、収穫の多いシーズンになったことは間違いありません。
おまけ
新しいシューズ、良い感じだ。