Jリーグはシーズンの半分を終了して、後半戦がスタートしています。まだ半分ではありますが、そろそろ気になり始める昇格、そして降格の行方。過去のデータから前半戦の順位が、最終順位とどのような関係になっているかを見ておきます。今回はその1回目として、J1リーグの残留と降格について取り上げます。
顔を上げてくれ、パルちゃん!
先週の土曜日、J1リーグは2ndステージの第1節、シーズン全体としては18番目のゲーム(全体で34ゲーム)が行われました。
優勝争いは、色々難しいルールで決められるのですが、降格チームは、1シーズンを通じた勝ち点で下位になってしまった3チーム(16位、17位、18位になったチーム)に決まってしまいます。
J1リーグの前半戦終了時点(1stステージ終了時点)の順位表がこちら。
(出典:Jリーグオフィシャルサイト )
降格に焦点を当てるため、10位以下のクラブを表示しています。
下位にいるのは、モンテディオ山形、アルビレックス新潟、清水エスパルス、の3クラブ。
残留圏内の15位のクラブとの差はほとんどないので、まだまだこれからと言った状況ですが、14位以上のクラブとの差を見てみると、勝ち点が3以上離れていて、1ゲームで追いつけない勝ち点差になっているので、これ以上は離されたくないところ(それでも、今年昇格した、湘南ベルマーレ、松本山雅FC、モンテディオ山形は、よく健闘していると思います)。
3クラブとも、1日も早く降格圏を脱してもらいたいのですが、その中で特に気になるのは清水エスパルス。
「オリジナル10」の一つであり(1992年のJリーグ発足時に加盟していたクラブのことをこう呼びます)、これまでJ2に降格したことがなく、
さらに、今年、愛媛FCにローン(レンタル移籍)で加入して、素晴らしいプレーを見せてくれている、瀬沼優司選手、藤田息吹選手の所属元でもあるので、(個人的に)非常に気になっていたのです。
そして、後半戦のスタートとなった先週の土曜日。
エスパルスは、ホームにヴィッセル神戸を迎えたのですが、
(出典:清水エスパルス オフィシャルサイト)
oh…
守備がズタズタじゃないかー。
実際にゲームも見たのですが、選手の動きが、チャートもコンパスもなく大海原を進む船のようで、不安と迷いの中、ふらふらとピッチをさまよっている印象でした。
これは相当にマズい。
そして、
選手は見てるのだろうか。
パルちゃんだけがこんなにも深々と
礼をしてる姿を。
選手はどう思ってるんだろうか。
#spulse pic.twitter.com/V78I6XQHOq
— けんちん汁@戦橙民族 (@spulse00) 2015, 7月 11
パルちゃん!(泣)
せっかく応援に来てくれたファン・サポーターに良いゲームが見せられず、せめてもの思いで精一杯の礼を尽くそうとする、清水エスパルスのマスコットキャラクター「パルちゃん」。
パルちゃんは、もともとお辞儀が丁寧なのですが、ここ数試合はいつも以上に深く、長くなっているそうです。
もう、胸が詰まって見ていられません。
パルちゃんのため、何より、ファン・サポーターの皆さんのために、エスパルスを立て直してもらいたいところですが、過去のデータで前半戦の下位クラブが残留するケースはあったのでしょうか。
振り返ることにします。
第17節時点で降格圏のクラブが残留した確率は ”30%”
第17節時点(リーグ戦50%消化)の順位が、降格圏の16位以下のクラブについて、最終順位がどうなったかを調査しました。
対象としたデータはJ1リーグが18クラブで構成されるようになった、2005年以降。
ただし、2008年までは下位3クラブの自動降格ではなく、「下位2クラブの自動降格+入れ替え戦」で降格クラブが決定しているため、最終節で降格圏の16位に入っていても、残留している場合があります。
前置きが長くなりました。見ていきましょう。
2010年〜2014年(データ:Jリーグオフィシャルサイト)
2005年〜2009年(データ:Jリーグオフィシャルサイト)
各年度の17節時点の、16位、17位、18位のクラブです。
17節時点の順位の右には、最終順位を入力。
さらに、最終的に残留を果たしたクラブには、「残留」の列に「○」が入力されています。
結果をまとめると、
こうなりました。
過去10年、第17節で降格圏(16位〜18位)にいたクラブは、
3 × 10(年) = 30
そのうち、18節以降で順位を上げて、最終的に残留圏内でシーズンを終えたクラブは、
2005年 大分トリニータ
2007年 大分トリニータ
2007年 ジェフユナイテッド市原・千葉
2008年 ジェフユナイテッド市原・千葉
2008年 横浜F・マリノス
2009年 ヴィッセル神戸
2010年 ベガルタ仙台
2012年 アルビレックス新潟
2014年 ヴァンフォーレ甲府
この9クラブ。
残留の確率は30%です。
確率としては高くないですが、絶望することもなさそうですね。
次に、残留した9クラブの内訳を見てみましょう。
残留した9クラブのうち、7クラブは16位からの残留。
そして、
17位からは、2007年の大分トリニータ(17位→14位)
18位からは、2008年のジェフユナイテッド市原(18位→15位)
の1ケースずつということで、17位、18位のクラブはかなり厳しいことが分かります。
同じ降格圏内でも、順位によって残留の可能性は大きく異なるということですね。
では、現在降格圏にいるクラブが、残留する30%のクラブに入るためにはどのような変化が必要かを確かめておきます。
残留に必要なのは、攻守両面のレベルアップ どちらかに偏ってはダメです
降格圏から残留したクラブと、降格圏を脱することができなかったクラブについて、17節までと18節以降の1試合あたりの平均得点と平均失点の変化について調べてみました。
結果は以下の通りです。
成績の上がらないクラブを建て直すときに、専門家の方が必ず言われるのが「守備の立て直し」。
ですので、残留するクラブの特徴として、失点の減少が顕著に現れるのかなと思いましたが、そうではありませんでした。
もちろん、守備は改善しているのですが(1.50→1.14)、同じか、それ以上に攻撃も改善していた(0.97→1.33)のです。
では、降格してしまったクラブは、得失点で改善がなかったかというとそんなことはありません。
両方とも改善はしています(平均得点:0.97→1.06 平均失点:2.02→1.89)。
ただし、残留しているクラブとの差があることも、お分かりいただけると思います。
それは、改善のポイントが失点の減少に偏っていること。
言い換えると、「得点力を十分に改善できなかった」ということです。
やはり、順位を上げるというのは、簡単なことではなくて、守備さえ改善すればOKということではなさそうです。
同時に得点力も上げることができなければ、勝ち点を稼ぐことはできずに、順位は停滞したままになってしまいます。
最後に、現在降格圏にいるクラブが残留のために目標とするべき方向性を考えてみます。
目標は、勝ち点38、平均得点1.33、平均失点1.14
過去10年のデータで、残留圏の15位のクラブが獲得した勝ち点は、
平均で38。
まずは、この勝ち点を確保することが目標になります。
17節時点で降格圏だったクラブを見ると、
24から25の勝ち点が必要で、残りのゲーム数が17であることを考えると、かなり厳しそうですね。
でも、やるしかない。
そして、得失点については、先ほど見たとおり、平均得点1.33、平均失点1.14を目指したいところ。
これも厳しそうですが、課題がハッキリしている分、やりかた次第では何とかなるかもしれません。
山形は「得点力の向上」、新潟、清水、は「失点の減少」ですね。
得点については、選手のクオリティで解決するしかないと言われていますので、山形は何とかして、攻撃的なタレントの補強にトライしたいところ。
一方で、守備については、やはり組織力がモノを言います。
新潟については、もともと守備のチームですし、中盤にレオ・シルバ選手が帰ってきたので、もう一度、守備組織を見直して、今いるメンバーの連携を深めることと、コンディションを整えることができれば、上手くいきそうです。
清水は、攻撃のタレントはもう十分。何よりも守備です。
守備のタレントがいないのかと言えば、そんなことはありません。
最終ライン、中盤とも実績十分な選手が揃っていて、あとは、その選手達を機能させるだけなのですが、それが…。
何をすべきかもハッキリしていて、
「守備の時の選手の配置と動きの整理」
これだけです。
これは、明らかに監督・コーチの仕事。
決断の時が迫ります。
まとめ
J1リーグで、前半戦の17ゲームが終わった時点で降格圏にいるクラブが、残留できる確率は30%です。
そのためには、守備もしくは攻撃に偏ることなく、両方を立て直すことが必要になります。
おまけ
明日は、創業補助金の完了報告についての打ち合わせ。
報告自体はもう少し先ですが、準備は早めに終わらせる予定です。