実務で使えるExcel入門セミナー Excelで「前払費用」を計算する

会社で前払いした経費は、翌月以降分を「前払費用」に振り替えます。日割り計算しなければいけないので面倒ですが、Excelを利用すれば早く正確に計算することができます。

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「前払費用」とは

会社で火災保険に加入している場合、保険料の支払いを前払いすることがあります(割引になることもありますからね)。その場合は、全額を支払った期間の経費にするのではなく、翌期以降の保険料については「前払費用」に振り替える必要があります。

 
具体例で見てみましょう。 
3月決算の会社が、9月に将来1年分の火災保険の保険料を支払ったとします。

 
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保険料を支払ったのが2015年の9月なので、2016年3月期の経費として記録したいところですが、この保険料がカバーする期間は、2015年9月1日から1年間で、2016年の8月31日までです。

 

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とすると、2015年9月1日の支払は、「2016年3月期分」と「2017年3月期分」の両方が含まれていることになりますから、

 

スクリーンショット 2015 10 07 10 22 05

 
翌期分については、翌期に振り替えることになります。 
この経費を翌期(あるいは翌月)に振り替えるときに使う科目が「前払費用」です。

 
当期の経費(この場合は「支払保険料」)をマイナスする代わりに、「前払費用」を資産にプラスします。

 
仕訳で見ておくと、

 
スクリーンショット 2015 10 07 10 33 50

 

 
このようになります。

 
前払いした経費が、翌期以降もカバーする場合は、「前払費用」を使って翌期以降に振り替えなければいけないのです。

 

 

 

Excelで「前払費用」を計算する

Excelで「前払費用」を計算してみましょう。

 
といっても難しいところはありません。 
前払いした経費のうち、当期分にあたる部分と翌期以降分にあたる部分を、日数を基準にして分けるだけです。

 
なので、Excelを使うポイントは、日数の計算です。

 

 
「前払費用」の計算で必要なのは、次の3つ。

 

必要なデータ入手方法
前払いした金額契約書で確認
①がカバーする期間契約書で確認&Excelで計算
期末日翌日から②の最終日までの期間契約書で確認&Excelで計算

 

 
データの入手方法についても記載しました。

 
Excelシート上でこの3つのデータを入力できるようにフォーマットを作れば、自動的に当期の「前払費用」の金額が計算できるようになります。

 
順番にやっていきましょう。
先ほどの「保険料の支払」を具体例として取り上げます。

 
(具体例)
 
・前払いした保険料の金額:1,200,000円
 
・前払いした日:2015年9月1日
 
・前払いした保険料でカバーする期間:2015年9月1日〜2016年8月31日
 
・当期:2015年4月1日〜2016年3月31日

 

 

①前払いした金額

まずは、前払いした金額です。

 
必ず契約書の原本を確認しましょう。 
経理部でも保管していると思いますので、原本の金額を転記するようにして下さい。

 
Excelシートでは次のように入力します。

 

スクリーンショット 2015 10 07 11 23 43

 

 
このように、入力セルが分かるように色づけしておくと、 
作業内容の説明がしやすくなりますし、誤った入力を防ぐことができます。

 

 

②前払いした経費がカバーする期間

次は、①の前払いした経費でカバーされる期間です。

 
こちらも、必ず原本を確認して転記するようにします。

 
Excelシート上では次のように入力します。

 
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年、月、日、に分けて入力するようになっています。 
なぜ、このように分けているかというと、日数の計算をDATE関数で行うためです。

 
Excelは日付の計算もできますが、その仕組みは1900年1月1日を”1”として通し番号を付けることで、足したり引いたりすることを可能にしています。 
(たとえば、2016年3月31日は通し番号が”42,613”、2015年4月1日は”42,248”と決まっているので、引き算すればその期間の日数が計算できます。)

 
日数(366)が入力されたセルには、次のような式が入っていて、

 

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=DATE($D$16, $E$16, $F$16) – DATE($D$13, $E$13, $F$13) + 1

 
DATE関数を使った引き算の結果が表示されています。

 
DATE関数は、年、月、日を入力すれば、先ほど説明したその日付の「通し番号」変換してくれる関数です。

 
つまり、DATE関数で日付を「通し番号」にすることで、足し算引き算が可能になり、その答えを日数で表示してくれるようになります。

 
最後に、上の計算式の最後が「+1」になっていることに注意して下さい。 
日数の計算では、開始日実際の日付にして計算しまうと、開始日が期間に入らなくなってしまうので、その分を最後に”1”を足すことで補う必要があるからです。

 

 

③当期末の翌日から、②の最終日までの期間

”当期末の翌日”から、”「前払いした経費がカバーしている期間」の最終日”までの期間です。

 
言葉だと分かりづらいので、図で見ておきましょう。

 
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赤で色づけした期間の計算です。

 
ただ、”「前払いした経費がカバーしている期間」の最終日”は、②で既に入力していますから、

 
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セルを参照すればOK。

 
入力が必要なのは、当期の期末日だけです。

 
Excelシート上では次のように入力します。

 

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日数(153)が入力されているセルですが、ここには次のDATE関数引き算の式が入力されています。

 
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これは、②の期間計算の方法と同じで、 
DATE関数によって「通し番号」に変換した日付を、引き算することで、期間を日数で表示したものです。

 
今回は「期末日の翌日」からの期間を計算していますから、期末日は期間に含まなくて良いので、最後の「+1」は必要ありません。

 
この点にも注意しておきましょう。

 

 

④前払費用の計算

必要な要素が出揃ったので、「前払費用」に振替える金額を日数の比率によってもとめます。

 
計算の仕方は次の通りです。

 
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念のため、図でも示しておくと、

 
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赤で示した部分を計算しています。

 
Excelシート上では次のように入力。

 

スクリーンショット 2015 10 07 12 40 42

 

 
計算結果のセル(501,639)がどのように入力されているかというと、

 

スクリーンショット 2015 10 07 12 42 12

 

 
=ROUND(D6 * ( B20 / B10 ) ,0 )

 
このように入力されていて、①から③を使って計算されていることが分かります。

 
なお、”=ROUND”で式が始まっているのは、計算結果を四捨五入して整数で表示するためです。

 
ここは、会社の方針によって、「四捨五入」「切り捨て」などが決められていますので、それに従って変更して下さい。

 
最後にフォーマット全体を表示しておきます。

 

 

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このフォーマットを毎期更新していけば、当期の前払費用の金額を計算することができます。

 
なお、複数前払費用が発生する場合は、別シートに分けて計算して、 
その結果を合計するようにすれば、スムーズに作業が進められます。

 

 

 

まとめ

前払費用の計算は、要素を整理して順番に計算していくと効率的に進みます。 
計算は難しくありませんが、必ず契約書の原本を見て、契約内容を確認しながらデータを転記するように心がけましょう。 
契約を更新しただけのように見えても、微妙に内容が変わっていることもあります。
 

おまけ

湿度が低くてランが快適。 
お昼に時間が取れる方は、是非街に出ましょう!

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