粉飾決算の原因  巨額の粉飾も、少額の経費の横領も原因は人の心の中にあります 

東芝の不正な会計処理について、来週にも特別調査委員会の調査結果が発表されることになっています。現時点での会社発表ですら、過去5年の決算について、営業利益に500億円の水増しがあったことを認めていますので、これからさらにその金額は増えると予想されます。「粉飾が500億円」と言われても、あまりに大きな金額で想像しづらいですが、東芝のような大きな会社でおこった巨額の粉飾でも、その原因は私たち一人一人の心の内にある”弱さ”や”隙”にあります。

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粉飾の原因で行き着くのは、「保身」と「贅沢」

公認会計士の仕事で最も特徴的なものは、「監査」と呼ばれる仕事です。

「監査」は、上場会社が毎年公表する決算書の数字が、正しいかどうかをチェックする仕事。

決算書は会社自身が作るものですから、チェックがなけれ数字を操作して、実際以上に見栄えの良い決算書にしてしまう危険性があります。

そこで、株を買おうとする投資家や、融資を考えている銀行などが、決算書の数字を信頼して使えるようにするために、決算書の数字が正しいかどうかをチェックする「監査」が必要なのです。

 


(出典:株式会社 東芝 2013年度有価証券報告書) 全ての上場企業の決算書には、監査を受けた証明である「監査報告書」が添付されています。現在の東芝は、不正調査が進行中で、今年の決算書ができあがっていないため、監査も未だに受けられていません。

このように、「監査」の本質は、「会社の不正を見抜く」ことにあります。
そこで、公認会計士試験の試験科目でもある「監査論」では、「不正」が起こる原因にも必ず触れることになります。

監査論で不正の原因として挙げられるのは、

1.動機・プレッシャー

2.正当化

3.機会

の3つ。

「1.動機・プレッシャー」の「動機」は、「贅沢をしたい」「暮らしを楽にしたい」といった、金銭的な欲求が高まった時。

「プレッシャー」は、上司から厳しく予算目標の達成を迫られるような時。

このような状況におかれたときに、数字を良く見せようとする気持ちが強くなります。

次の「2.正当化」は、不正をするかどうかの一線を越えるときの、自分に対する言い訳です。

・前任者も同じようにやってきた

・自分がやらなくても他の誰かがやることになる

・こうしなければ会社が大変なことになる

・将来、会社の業績が上向けば、問題にはならない

など。

不正を行う前には、踏ん切りをつけるための理由を探します。

最後に「3.機会」。
これは、ある程度広い権限が与えられていて、チェックを受けることなく不正を行える立場にあることです。

たとえば、財務部門や経理部門の責任者であったり、責任者ではなくても、実質的に部門を取り仕切るような存在で、責任者のチェックを容易にかいくぐることができるような担当者であったり、

さらには、経営者であれば、社内でチェックを受けることはほとんどないので、簡単に不正を行う機会があると言えるでしょう。

監査論では、この3つの要因を挙げて、それらが揃うと、不正の危険性が高まると言われるているのです。

「監査論」という学問として扱われると、なかなか高度に思われるかもしれませんが、

内容を具体的に見てみると、少しも難しいところはなくて、

「良い暮らしがしたい」

「失敗したくない」

「責められたくない」

と言った、誰の心にもある、

贅沢」と「保身

の気持ちが、不正の原因になっていると言うことなのです。

 

 

 

誰にでもある「弱さ」と「隙」

確かに、「良い暮らしがしたい」「責められたくない」と言う気持ちは分からないではないですが、それでも、それが原因で法律違反でもある不正にまでつながってしまうのは、不思議にも思います。

まして、東芝のような大きな会社で、トップにまで上り詰めるような人たちにとっては、法令違反によって会社が受けるダメージや、自らに降りかかってくる責任、粉飾による社会的な影響がどれほど大きいかはよく分かっているはずですから、

「責められたくない」「失敗したくない」と言った、言わば子供じみた理由で、不正に走るなんておかしいんじゃないかと。

理屈としてはそうだと思うのですが、その一方で、
我が身を振り返ってみると、会社で仕事をしているときに思っていた「失敗したくない」「責められたくない」という気持ちは結構強かったように思うのです。

「低い評価を受けたら昇進できない」

「失敗を責められたくない」

「同僚から惨めな目で見られたくない」

など、情けないことですが、見栄や処遇のことが思い浮かんで「できるだけ自分を良く見せたい」という気持ちを強く持っていたことは、間違いありません。

「失敗」や「叱責」は社内の評価にも厳しく反映されます。
自分が感じていた以上に、「失敗」や「叱責」に対しては敏感だったのではないかと思っています。

そのことを考えると、

「年はとっても、心の内にある”弱さ”や”隙”は何も変らないんじゃないか」

とも思うのです。

子供の頃は、親から責められるのが怖くて、「テストの成績」や「家の物を壊したこと」をごまかせないかと真剣に考えて、

それが、大人になったら上司や同僚の目が怖くて「失敗」や「叱責」を避けるために、自分を良く見せようと「失敗をごまかせないか」という考えが浮かぶという。

結局、心の”弱さ”や”隙”は、どこまで行っても人の心の中に潜んでいて、人生の様々な局面で顔を出す、ということなのかなと思っています。

と言うことは、大きな会社で重要なポストに就くような人にとってもそれは、同じ。

社内で出世していく人は、「失敗」や「叱責」と言ったことを気にしなくても、上手に課題をクリアしていける聡明な人たちです。

ですが、一定以上のポストに就いたときに初めて、想像以上に厳しい外部からの「責任を求める声」や「叱責」を経験するようになった時、全ての人が同じように対処できるとは限りません。

そこで忍耐強く、事態を好転させるために、フェアに力を尽くそうとする人もいますが、中には、そのようなプレッシャーを避けるために、不正を考える人もいるでしょう。

しかも、上位のポストになれば、かなりの程度裁量が認められますから、実行のハードルもかなり低いはずです。

このように考えると、大きな会社で重要なポストに就いている人達は、与えられる権限は広いですが、受けるプレッシャーも極めて強い。

それでも、同じ人間ですから、心の”弱さ”や”隙”も同時に持ち合わせている。

このような状態で、毎期の決算を迎えているわけですから、

不正の誘惑との戦いも、私たちの想像以上に厳しいものがあるというのが分かるのではないでしょうか。

 

大きな会社の巨額の粉飾も、その根元を辿っていくと、誰にでもある

「心の中にある”弱さ”と”隙”」

に行き着くのです。

 

 

 

不正を乗り越えるのも、心の中の問題

不正を防ぐための手段として、法律の整備や社内の内部統制、監査人による監査など、複数の手段が講じられています。

ですが、先述の通り行き着くところは「人の心の中」。

どれだけ法律の罰則を強化しても、内部統制を厳しくしても、最後は不正を実行しようとする人自身が、心に歯止めをかけるしかありません。
(内部統制も経営者による不正に対しては有効に働かないとされています)

「心の内にある”弱さ”や”隙”」は、どこまで行ってもつきまとうものでしょうから、不正を防ぐには、

「誠実」「正直」「公平」

といった価値観の重要性を、心の中に宿しながら、「”弱さ”や”隙”」と葛藤する以外はないように思います。

最後は、青臭く、偉そうなこと言ってしまいましたね。
これは、「自戒を込めた文章でもある」と言うことでお許し下さい。

 

 

 

まとめ

複雑に見える粉飾決算でも、原因を探ると心の中にある”弱さ”と”隙”に行き着きます。
それを取り去ることは、おそらくはできないので、「誠実性」や「公平性」といった価値観を頼りに、乗り越えていくしかないでしょう。

おまけ

粉飾決算が許されないことは当然ですが、原因を探ると「あー、そういう事情なら分かるなぁ」ということも結構あります。
「許されないけど、同情してしまう」と言うのでしょうか。
だからこそ、その誘惑を乗り越えるのは難しいわけで、そのために普段から誠実さと謙虚さを大切に…
謙虚さを…
お前は、もう少し謙虚さをだなあ…