「最強の経理実務Excel教本」ができるまで (後編)

「最強の経理実務Excel教本」ができあがるまでには1年4ヶ月という長い年月がかかりました。前編では1つの節目である初稿の完成までを振り返りましたが、ここは単なる通過点。ここからまた長い道のりが始まります。

「最強の経理実務Excel教本ができるまで (前編)」はコチラです。

 

 

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ゲラの完成 (2017年7月20日)

2017年4月2日、全ての原稿が完成しました(「最強の経理実務Excel教本ができるまで (前編)」参照)。次は、編集者の三浦さんと校正担当の方が目を通します。内容に問題がないかを確認して、問題があればどのような修正をするべきかを検討。また、不自然な表現や誤字脱字があれば修正が加えられます。

原稿の確認作業にはしばらく時間がかかるとのことでしたので、僕の作業は、”待ち”の状態になりましたが、その間に打ち合わせがありました(2017年5月16日)。目的はもちろん提出した原稿についてです。

初めての単行本ですし自分の原稿がどのように評価されたか、少し不安もありました。修正依頼が山盛りだったらイヤだな〜と。一方で、かなりの分量があるので「ある程度の修正は仕方ない」とも思っていましたが、予想に反して内容についてのダメ出しはとくにありませんでした。「最初の原稿がそのままOKになるケースはほとんどない」とのことでしたので、僕の場合はラッキーでしたね。

ただ、これには理由があると思っています。それは、時間をかけて目次案を深く掘り下げる作業をやったこと。これをしておいたおかげで、編集者と僕の間で「どのような方向性で本を作るか」の認識を共有できていましたし、原稿を書き始める前に書くべきことが明確になっていたので、執筆中もブレることなく1つの方向に向かって書き進めることができました

書く内容の方向性を編集者との間で共有できていると、出来上がる原稿に対する評価についても大きな相違が生まれにくくなるんですね。やっぱり、最初が大事。昨年苦しんだ目次案の作成が、ここにきて生きることになりました。

 

そこからさらに細かい確認作業が行われて、原稿として問題がないと判断された段階で、原稿を本のレイアウトに落とし込んで行きます。”ゲラ”の完成です。

僕は原稿を「近日出荷」のページを使って書いていました(原稿のページについてはパスワードで保護していました。現在はページを削除しています)。ブログを使えば本文に挿入する画像も含めてレイアウトを確認することができますし、原稿の受け渡しもWeb上で行えるので効率的だからです。

原稿の段階ではこのようなレイアウトにして提出していたのですが、

 

 
(提出した原稿。「近日出荷」のページ上で作成しているので、レイアウトもそのままです。)

 

この原稿にチェックが入って”ゲラ”になると、このように

 

 
(本のレイアウトに落とし込まれています。イメージが大きく変わりますね。)

 

本のレイアウトになって返ってきます。

プロの手にかかると、レイアウトが一気に”書籍!”に変わってしまうのですから驚きです。自分なりにブログのデザインについては気を配っているつもりでしたが、プロのレベルは違いすぎました。

全てのゲラが手元に届いたのが7月18日。PDFでもらったのですが、原稿の状態とは全く違っていて、「自分の本が出るんだ」という実感がふつふつと沸いてきました。

 

 

今日から修正祭りだぞ!! (2017年7月26日〜2017年9月5日)

「原稿→ゲラ」へと変わっていくのを見て、「これでやっと出版だぜ!」と思っていたのですが、ぜ〜んぜんそんなことはありませんでした。甘かったです、はい。

ゲラはレイアウトこそ本の形になっていますが、中身は編集部での確認、修正後のもの。つまり、それを自分で確認しなければいけないのです!!!

まあ、当たり前と言えば当たり前ですよね。自分で書いた原稿ですからね。最終的にOKを出すかどうかは僕自身です。

と言うわけでここからゲラの状態になった原稿の見直しの作業が始まりました。誤字、脱字については校正が入っているのである程度修正できていますが、気がかりだったのが関数に入力されているセル番地です。

「最強の経理実務Excel教本」には多数の画像が使われていますが、その多くはExcelシートの画像なんですね。本文とExcelシートの画像を交互に交えながら解説しているのですが、本文で解説している関数のセル番地Excelシートの画像にある関数のセル番地ズレてしまっているところがあったんです。

と言うのも、Excelシートの画像は、本を購入するとダウンロードできるサンプルのExcelファイルを、スクリーンショットで撮影したものなのですが、

 

 
(「最強の経理実務Excel教本」でダウンロードできるExcelファイル。このファイルを作成しながら、画像を撮影しました。)

 

そのExcelファイルは、原稿を書き進めながら作成していったんですね。なので、原稿の途中で不具合が出てくれば、その都度修正したり、データを追加したりしながら原稿が書き終わると同時に完成するわけです。

そうすると、最初の方で説明したときのExcelシートと原稿が書き終わったときのExcelシートでは、列や行の数が変わってしまっていて、最初に説明したときのセル番地からズレてしまうところが出てきてしまうんです。

 

 

執筆中は、「とりあえず最後まで書ききろう」という気持ちでいたので、データ追加後のExcelシートに合わせたセル番地の修正をしていなかったのですが、そのツケが最後に回ってきました(まさに自業自得。ぐぬぬ…)。

 

また、画像については「近日出荷」にアップロードした状態からでは取り込むことがでいないということで、もともと「keynote」というアプリで作成していた画像データを送っていたんです。

ところが、「所々見つからない画像がありますよ」という指摘を受けて、これも作り直しの依頼が大量にくることになりました。

 

と言うことで、

 

・言葉づかいや表現で不自然なところはないか

・誤字脱字はないか

・画像と本文の解説とExcelシートの画像で、セル番地が違う所はないか

・ゲラにある画像で見づらいものはないか

・画像データで抜けているものを再度作成する

 

など、

 

結局イチから見直しじゃんかーー!!

 

と言うことに気づいて、ゲラの修正作業に取りかかるのでした(気が遠くなるよホント)。

 

 

最初のゲラ修正  「あれ? 何かおかしくないか?」(2017年8月8日)

ゲラの修正がスタートしてからは、とにかく自分の書いた原稿を読んでいきました。間違いが無いかを確認しながらの作業ですので、同じ文章を何度も読み返して、適切で分かりやすい表現は何かを探りながら、正確な言葉づかい、的確な表現に直していきます。言葉だけでは分かりにくいと感じた所は、画像を追加・修正して何とか初見の段階でも伝わる文章にしようと努めました。

実際に作業したファイルを見てみると、

 

 
(黄色のラインマーカーが変更箇所。内容は変わっていませんが、至る所に細かい修正が入っているのが分かります。)

 

黄色のラインマーカーが修正箇所で、赤字の箇所は丸ごと文章を差し替えた所。画像についても差し替えを指示しているところなど、修正箇所が大量にありますね。このページが特別かというとそうでもなくて、多くのページでこれくらいの修正箇所がありました。

ただ、修正作業をしている最中に「あれ?」と思うことが何度かありました。普段ブログを書くときには絶対に使わない表現が使われていて、違和感を覚えることがあったんです。もちろん、そのような箇所にも全て修正を加えて、ゲラの修正を終えました。

修正後のゲラを提出したのが2017年8月8日でした。

 

 

違和感の原因、そして衝突  (2017年8月7日)

修正した最後のゲラを提出したのは8月8日でしたが、早く仕上がった章については先に編集部へ提出していました。その先行して提出していたゲラの修正分について、三浦さん(担当編集者)から連絡が入りました。

その内容は、「原稿(僕が最初に執筆した原稿)→ゲラ(本のレイアウト&編集部で修正)」に落とし込んだ際の修正内容について。

僕自身は、自分の原稿がゲラになった時には、

 

・レイアウトを書籍用に変える

・画像をより分かりやすいものに改善する

・誤字脱字の修正をする

 

くらいの修正が行われていると認識していました。これで大きな間違いはないのですが、実際にはもう少し突っ込んだ修正が行われていたようです。

それが、体言止めです。

三浦さんの話によると、実用書では「丁寧な文章でしっかりとした情報を提供する」ことを重視して体言止めを使わないとのこと。そこで、ゲラに直す際に、僕が使っていた体言止めを極力排除する様に修正したということでした。

これで分かりました。ゲラを直して行くときの違和感の原因が。
自分では絶対に選ばない不自然な文末表現が違和感の原因で、具体的には、体言止めを無理やり「です」「ます」に変更したことによるものだったんですね。

そして、今回連絡があったのは、

 

・原稿→ゲラ(編集部):体言止め排除

・ゲラ修正(高橋):体言止めに戻す

 

と意図せず綱引きをした結果、最終的にどっちにする? という相談のためでした。

 

もちろん僕は、

 

体言止めアリに決まっとるやろ!!

 

と主張して体言止めにするべきところは、体言止めにしてもらうように伝えました。

「丁寧な文章でしっかりとした情報を提供する」ために体言止めを排除するとのことでしたが、体言止めがあることで「丁寧な文章で情報提供できない」なんてことはありませんし、そもそも、文の前後も考えずに文末を「です」「ます」で置き換えることは、表現の不自然さを招いてしまって読みづらくなるんですよね。分かりやすいところで言うと、文末が「です。」「です。」「です。」、「ます。」「ます。」「ます。」と重複する場合などです。

僕も文末の表現については神経を使っていて、「前後の文との関係」「文の前半との関係」などを考えながら決めているので、体言止めを機械的に「です」「ます」と置き換えられていたと知って、正直、激ギレしました。「どれだけ考えて文末の表現決めたと思っとんねん?」と。

ただ、誤解してもらいたくないのは、誰かが悪いというのではないこと。編集部は編集部で「実用書はこうあるべき」「これこそが読者の皆さんに対しては適切な表現だろう」との考えがあり、僕は僕で「分かりやすく伝えるならこうするべき」「多くの方に読んでいただくなら、この表現を使うべきだろう」との考えがあるにすぎません。

いいものを作ろうと考えているのは、お互いに変わりませんから、それを遠慮して引っ込めていては意味がありません。よりよいものを作るために、お互いの考えを(時には感情も含めて)ぶつけ合って解決策を探っていくことが大事だと考えています。

今回については、体言止めを使ったとしても、編集部の意図を損ねることはないと確信していましたし、なにより執筆についての責任は自分にあるので、強く主張して意見を通してもらいました。おそらく、問答無用で変えてしまう編集者さんもいるでしょうから、きちんと議論しながら決めてもらえる僕の環境は、恵まれていたと思っています。

こうして、校正(編集部による修正)に対する違和感についても解消し、さらに修正作業を続けた結果、8月8日に作業が完了。修正後のゲラを提出することになりました。

 

 

修正後のゲラが返ってくる&2度目の修正作業  (2017年8月29日)

2017年8月21日、修正を加味したゲラが返ってきました。ここからさらに修正作業が続きます(まだまだですな〜)。

1度目の修正で大きな誤りはなくなったので、次は、さらに細かいところを見て誤りがないかをチェックすること、分かりづらい箇所がないかを確認して、より分かりやすい表現に変えること、を目的に見直して行きます。

「1度見ているから大丈夫だろう」と言う思い込みはとても危険で、しっかり見直していくと、修正すべきポイントが続々と見つかります。

特に、表現や用語の統一について多くの修正を行いました。たとえば、Excelファイルのことをあるページでは「Excelファイル」、別のページでは「Excelブック」としている場合に、「Excelファイル」で統一する、と言った修正です。

 

 
(キーを押す操作について、一部「タッチ」が使われていたので「押す」で統一した)

 

また、初回の修正がきっかけになって修正を行った箇所もあります。たとえば、初回の修正時に差し替えた画像が分かりやすかったので、それに合わせて、周りの画像についても同じスタイルにして分かりやすい画像に差し替えたりしました。

 

2回目の修正とは言え、1からの見直しであることには変わりなかったので、作業としてはキツかったのですが、この頃には9月発売予定であることを知らされていたので、「やれることは全てやろう」と気持ちを入れ直して丁寧に作業を進めていきました。

初回ほどではありませんが、今回もかなりの修正を行って、2017年8月29日に作業完了。編集部に提出しました。

 

 

いよいよ作業も大詰め!最後の修正作業 (2017年9月3日)

2017年9月1日、2度目の修正を加味したゲラが戻ってきました。ここから最後の修正作業です。

と言っても、3度目の修正は各章に小さな修正がいくつかある程度で、大きな修正はほとんどありません。修正作業も2日間で終わり、2017年9月3日には修正結果を提出することになりました。

 

<修正作業の記録>
・修正箇所:700箇所

・追加、差し替えの画像:101

 

修正作業完了までには時間がかかりましたが、これでようやく終了。
全体の作業終了もあと少しです。

 

 

「タイトルって自分で決められないの?」 タイトルの決定 (2017年9月4日)

修正作業と並行して、タイトルも検討していました。

僕は勝手に、「タイトルは自分でつけるものだ」と思っていて、2017年5月の段階でタイトルの案を3つ考えていたんです。で、意気揚々と提案したのですが、あまり色よい返事が返ってこなかったんですね。その時は「何でだろう? 真剣に考えたんだけどな」と釈然としない気持ちになっていました。

それで、しばらく待っていたのですがいつまで経っても話しが進まないので、「僕のタイトルで行きましょうよ!」とプッシュしたのですが、話しを聞いてみるとタイトルは、著者だけで決められるものではなく、編集部、営業部、最終的には出版社の社長の判断があって最終的には決まるものとのことでした(全然知らなかった!)。

本を作っても売れなければ意味がありません。タイトルは売上に直結する大事なものですから、本の内容だけでなく、売るためのタイトルが必要です。そのために、様々な観点から検討が加えられて最善のものを選ぶと言うことでした。

そして、生み出されたタイトルが、

 

最強の経理実務Excel教本

 

です。

このタイトル、僕の案が全く入ってないわけではありません。僕の案がたたき台になって、それにいくつかの言葉を付け加えてできあがったものです。考えてくれたのは、編集者の三浦さん。

本の内容をうまくとらえつつインパクトのあるタイトルにしてもらえたので、今は僕も気に入っています。

 

 

「はじめに」を書く (2017年9月3日)

本文の執筆、修正が完了してタイトルも決定。最後の作業として「はじめに」を書くことになりました。

「はじめに」については本文とは少し離れて自分が考えていることを書くことができるので、「カッコいいこといっぱい書いてやるぜ! ヘッヘー」とか思ったのですが、ここを思い入れたっぷりに書いてしまうと、ちょっとイタい人になってしまいますし、長々と自分語りをすると最後は遺書みたいになって趣旨が変わってしまうので、この本を書いた理由について簡単に書くことにしました。

ただ、Excelについて真剣に考えるきっかけになった、監査法人時代の仲間とそのあとで仕事をした会社の仲間のことだけは、どうしても触れておきたいと最初から思っていたので、サラッと入れてしまったけど(みんながこの本を読んでくれると嬉しいなぁ)。

これで、本に書かなければいけないことは全て書き終わりました。

 

 

作業完了報告 2017年9月8日

2017年9月8日、三浦さんから作業完了報告がありました。
全てのデータが印刷所に回り、書籍ができあがることになります。

あとはもう待つだけです。早く完成した本を見たい!!

 

 

書店に並んだ「最強の経理実務Excel教本」を確認する (2017年9月23日)

9月14日、本が出来上がったので三浦さんに見せてもらうことになりました。

打ち上げを兼ねてお酒を飲みつつ見せてもらったのですが、実物を見たときは本当に嬉しかったですね。

表紙はスッキリとしていてインパクトがあり、中身も色使いがよく整理されたレイアウトでとても見やすくなっていて、想像以上のできに思わず笑顔になってしまいました。
(気分がいいのでパカパカお酒も飲んでしまいました(笑))

それから9日後には、

 

 

ありましたー。

青い表紙のニクいヤツ「最強の経理実務Excel教本」、書店で元気に並んでました。

あとは、この本が売れて印税が…できるだけ多くの方の元に届いて、少しでもExcelスキルの向上に役立ててもらえると嬉しいです。

 

 

本が出版されて感じたこと、考えたこと

今回は、幸運に恵まれて本を出させてもらうことができましたが、書店に自分の本が並んで感じたのは、全国の方に自分の本を目にしてもらえる機会がもらえたことの意味の大きさでした。

僕はブログで情報発信をしているので、僕の文章を目にしてもらえる可能性は世界中に広がっています。ただ、実際にそうしてもらえるのは、ネット上で情報を検索して「近日出荷」を見つけてもらえた場合だけです。

書店で本を見つけてもらう場合は、(書店に足を運んでもらう必要がありますが)書棚を見渡しながら「他の本を探していると目についた」「表紙が何となく気になって」と言った意図せぬ出会いによって、僕の本に辿り着いてくれる可能性があります。これは、ブログの発信だけではなかなか起こらないことです。

そのような機会が全国の書店で待ち受けていると考えると、本当に嬉しく、ありがたく感じます。

これから始まるであろう本を通じた出会いが楽しみです。

 

 

まとめ

「最強の経理実務Excel教本」に辿り着いてくれたみなさん、興味を持ってくれたみなさん、本当にありがとうございます。僕の持っている全ての力を注ぎ込んで書きました。現時点で文字通り”最強の”Excel本になったと自負しています。必ずお役に立てると思いますので、是非かわいがってやって下さい。

今後ともよろしくお願いします!

 

 
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おまけ

作業が明け方まで続いたときによく聞いていました。この曲がかかると、原稿を書いていたときのことを思いだして、ちょっとだけ気持ち悪くなります…(笑)。

 

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